★みんなの学校・視察報告その②~大阪池田市・大空小学校~
大空小学校の約束はたった一つ。
『自分がされていやなことはひとにしない 言わない』
全教職員のチーム力で、全ての子どもの学習権を保証する学校作り。
なぜこんな学校が実現出来たのか。映画「みんなの学校」を見て、元校長の木村先生の講演を聞き、謎だった答えは、子どもたちと先生方の姿が教えてくれた。
視察当日は体育館で『Birthday Message 集会』が開かれた。各学年の子どもたちが、バラバラと体育館に入ってきて、思い思いの場所で座りだしたように見える。先生が大声で指示を出す様子は見られない。集会を仕切っているのは、どうやら高学年の子どもらしい。
誕生月の子どもと大人が前に出て、全校生徒の前で自己紹介し、将来の夢を語る。小さな一年生は、さぞドキドキするだろう。でも大きな声で、あるいはマイクを使って、「私は○○が好きな◇◆です。私の夢は◆です。何故なら●だからです。」この発表の仕方にまず感心した。
自分を肯定的な言い方で他人に紹介する。そして自分の未来の夢には、ちゃんと実現可能な理由があると捉えて伝える。そして更に、全校生徒、先生方、地域の大人たちからたっぷりと笑顔や拍手で祝福してもらう。こんな経験をすれば、「自己肯定感」は確実に高まるだろう。
この場で感心したことはまだ三点ある。
ひとつは、自分で言えない子、声を出せない子には、司会の5,6年生のお姉さんが「○○ちゃんは転校してきたばかりでまだ慣れていないから、代わりに言うね。」とサラッと紹介してくれたこと。先生は一切出番がない。
二点目。マイクを使いたくない子は自分の声で話していたが、時々体育館の後ろに座った先生が、サッと手を挙げる。するとその場合は、マイクを使って話し出す。つまり、『マイクを使っても使わなくても自由だけど、後ろの人まで聞こえない時には先生が合図するから、その時はマイクを使おうね』と、決めてあるのだろう。このやり方もさりげないが、子どもの自己決定権をきちんと保証したものだ。
なるほど、このような姿勢が貫かれていて、「自分も友達も大切にする」学校を作っているのだろうと感心する。
三点目は、立ち歩くなど、集団で座っているのは苦手と見える子にも、ちゃんと大人が傍に付いていた事。無理に、座るように促す様子は全くなかった。個々の事情はわからないが、子どもも大人もいらだつ様子も無く、自然体でそこにいるように見えた。
しかしこれは『子どもの意思を尊重しながら、少し離れて場を共有する』姿であり、高度なスキルに感銘を受けた。
この朝の集会だけでも、ゆるく見えて実は明敏な先生方の方針が垣間見えた。校門で、ひときわ元気な声で「おはよう!」の挨拶をされていたのが、体育の先生かと見間違えた校長先生だった。体育館での集会にもずっと参加されていて、集会後子どもたちが教室に帰って行く間の時間、車座になりその場の大人全員でミーティングをされていた。
『その日の事はその日のうちに、共有し、解決』元校長、木村先生の言葉だが、その実践を目の当たりに出来て光栄だった。
その後、今回は無理と聞かされていた子どもによる学校案内『ナビ隊』も、まさかの実現の運びとなった。私もマンツーマンで5年生の女子に案内しても貰えた。
校長室から続く教員室。「ここはいつも先生が必ず一人はいるから、困ったときはいつ来てもイイの。授業中でも。私も3年生の頃は時々来たよ。今は来ない。」
「私は大切な存在。だから困ったときは大人に助けてもらえる。」そんな心が大空小の子ども達には育っている。
大空小には不登校児はいない。そして障害があっても、全員が普通級で学ぶ。特別支援学級6クラス分の先生が加配されているそうだ。
「学校はあるものでは無く作るもの」
校長先生のお話が印象的だった。困ったことがあれば大空小学校では、地域の方も、担任でない先生も、みんなで考えてその日のうちに動く。失敗したらまた誰かに相談してやってみる。「自分の学級だけで抱え込まない。地域の人や保護者が、『自分の学校』と思うかどうか。子どもたちは、自分から発信している。どの大人も聞いてくれるから、安心して職員室に飛び込んでくる。」
こどもが安心して飛び込んでくる教員室。まずはそこから小金井でもやってみたい。学校は、失敗できる場なのだと子どもが思えるには、先生方はじめ大人が『失敗してもやり直せる』姿を見せる事が必要だと再確認した。