「こうのとりのゆりかご」から命の教育と養育制度を考える

〜熊本での視察を終えて〜

相談を呼びかける案内があちこちに
相談を呼びかける案内があちこちに
多摩地域のネット議員総勢8人で、熊本市の『こうのとりのゆりかご』を視察してきました。

熊本市にある慈恵病院の『こうのとりのゆりかご』は、親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れる施設として3年前に開設されました。

『こうのとりのゆりかご』の看板に従い病院の裏手に回ると、壁面に隠れるようにして小さな扉が見えました。

匿名でそっと置いていくことも出来ますが、「いま赤ちゃんをあずけようとしているお母さんへ チャイムを鳴らす勇気を!ダイヤルを廻す勇気を!」と呼びかける看板を、何人の母たちが切実な思いで読んだことでしょう。

妊娠・出産は女性だけの問題ではないのに、問題を抱えて心身ともに傷つくのは、いまだ女性なのだと、改めて心が痛みます。

<命の救済>か、<親の子捨て助長>か、「赤ちゃんポスト」として全国的な議論を呼びました。
慈恵病院はカソリックの病院として、明治時代からハンセン氏病患者や高齢者、孤児など、社会的弱者の救済に尽力してきた歴史があります。この取り組みがこの地で始まり受け入れられた背景には、<あの病院がやることなら大丈夫>という地域の信頼関係があるのだと納得しました。

『ゆりかご』開設で、全国からの妊娠・出産・養育相談が激増したそうです。『ゆりかご』に預けられた57人の赤ちゃんを含め、83人が養子縁組し、129人が自分で育てることを選択、17人が施設入所しました。<229人の命が助かったと思っている>と言われた言葉は重く心に残りました。病院内では3人のスタッフが24時間体制で、365日の相談を受けています。行政に相談しても、その対応で逆に傷つき、駆け込んでくる人が多いと言います。東京からの相談も大変多いそうです。10代での妊娠やレイプ被害など、望まない妊娠で悩み、必死で飛行機や電車を乗り継ぎ、慈恵病院に着くなり出産した例もあるそうです。

3年前に慈恵病院の理事長がこの取り組みを始めたきっかけは、あいついで報道された新生児遺棄事件です。どうしても親が育てられないケースも、残念ながらあるのが現実です。助かる命なら助けたいと、ドイツでの取り組みを視察し、病院内での受け入れ施設設置を決意したそうです。

命の大切さを伝える性教育や相談体制の充実が緊急課題であると共に、養育する施設や養子縁組制度についても、子どもの権利を守る視点での検証が必要だと感じました。
2歳までは乳児施設、その後は養護施設、と育つ環境が法制度で強制的に変えられます。子どもは職員を親と思って育つので、施設を移る時には2度目の親別れを強いられるのです。又養子の場合も、成長した子どもが自分の親を知る権利をどう保障していくのか、しっかりと大人社会が議論検証を行う責任があるのです。

命を大切にする社会、そして社会全体で子どもを育てるためには教育と福祉、医療など様々な機関の連携が重要です。安心して出産・子育てできる体制が小金井にはあるのか、学校での性教育も含め、調査・研究を進めたいと改めて強く感じました。